\ アイティメディアの想いを伝える採用サイト /

ちょっと変わったおっさん、人事責任者になる

 人事の方針は、会社の価値観や雰囲気に影響することがあります。就職活動中、転職活動中の方には、自分が活躍できそうな会社を選ぶために、知っておきたい情報ではないでしょうか。

 そこで、2023年5月から人事統括部長に就任した河本晃に、HRリクルート&サポート部長として採用と労務を担う木幡がインタビューしました。アメフト日本代表、トップセールス、新規営業基盤の立ち上げ、システム(=チーム)コーチ、そして人事責任者と、誰も真似できない稀有なキャリアを辿ってきた「自称:ちょっと変わったおっさん」河本が考える、「人事のありたい姿」とは?

【人事統括部長 河本 晃】
1967年生まれ、奈良県出身。1991年に新卒入社した会社で10年間、アメリカンフットボール実業団選手と営業マンを両立しその後はメディア営業管理職、事業ボードメンバーとして活躍。2015年アイティメディア入社。営業本部にてインサイドセールス組織、マーケティング組織を立ち上げ、新規顧客開拓の組織基盤を築く。チームの可能性を拓くことに関心が高まり、システムコーチの国際資格を取得。2021年から企業内コーチとしても活動し、2023年5月に人事統括部長就任。
※所属部署や業務内容はインタビュー当時(2023年8月時点)のものです

 

チームで成果を出すオモシロさ

――まずは、河本さんのこれまでのキャリアを教えてください!

河本: 私が社会人になってから、33年になります。その間の多くを、メディア営業として過ごしてきました。

 キャリアの最初の10年間は、アメリカンフットボールの実業団選手としても活動していました。私は大学時代にアメフト部に所属していたのですが、新卒で入社した会社にもアメフトチームがあり、ちょうど社会人1部リーグに上がったばかりでした。仕事もアメフトもどっちも日本一を目指す! という熱い人たちに感化されて入部したんです。

 当時は、水曜日と土日に練習がありました。そのため、月火木金の週4日で営業マンとしての目標を達成する必要がありましたが、おかげで限られた時間での集中力が相当鍛えられましたね。また、アメフトチームとしては、6年目と8年目に日本一になることができました。チームと自分自身が変化していくプロセスの中で多くのことを学んだ経験は、現在システム(=チーム)コーチとして活動していることにもつながっています。

 実際、今でも鮮明に覚えているのは、東京ドームでの試合の最後の勝負のプレーでボールをキャッチできなかった体験です。応援してくれているたくさんの観客のみなさんの落胆の溜息の中で、もう死んでしまいたいと思いました。その後数か月は本当に心が死んだようになっていて、今から思うと鬱状態だったんでしょうね。でも、とことん落ち込んだ後に、消し去りたいその瞬間のことをゆっくり味わいなおす中で、究極の瞬間に守りに入っていた自分に気づいたんです。結果はどうであれ、究極の瞬間に自分のすべてをそのまま出すことにフォーカスできる人間でありたい、と強く感じました。それからは、結果にこだわりつつも、一方で結果を手放すような感覚を持てるようになったと思います。そして、そんな自分自身の在り方がチームに与えた影響もあったように思います。

 新卒入社後の1年半は、新卒採用の仕事をしていました。「あなたは本当に何がしたいの?」という問いを、学生にも、そして自分自身にも問い続ける時間でした。当時在籍した会社は、自分の中から湧いてくる想いやエネルギーをとても大事にしている組織でした。ひとりひとりの中にあるものを信じて、最大限に発揮する場を創りたいという考えは、その時に養われましたね。

 2年目の途中から、メディア営業職になりました。営業に異動したのは自ら望んだことです。現場を経験せずに、人生を語るのも違和感があったんですよね。それで、新規に立ち上げるメディアに異動することになりました。

 9年目に組織マネージャーとなり、その後はチームで成果を出すことに没頭してきました。クライアントやチームメンバーと関わり、変化を作る奥深さに気づいたのがこの時期です。この「チームの変化と個人の変化が同時に起こっていくオモシロさ」は、私にとって現在までキャリアの軸となる価値観です。

 アイティメディアにジョインしたのは、2015年です。当時担当していた事業と共にアイティメディアに移籍しました。その事業も自分もアイティメディアと一緒になる方が未来が拓かれると判断したからです。アイティメディアでも、営業本部の管理職として、インサイドセールス組織・マーケティング組織を立ち上げ、新規顧客開拓の組織基盤を構築してきました。

 この新たな取り組みもスムーズに進んだわけではありません。でも、うまくいかない時にこそ、新たな変化の兆しがそこにあるんです。すぐにはそれに気付けず悩みぬいて、そしてフッと力が抜けた時に何かを感じ取ったりするんですよね。自然の中に身を置くこと、自然を五感で感じることの大切さを身をもって体験しました。山伏の修行やネイティブアメリカンの祈りも、私にとっては深い気づきにつながる貴重な機会なんです。システム(=チーム)コーチングのプロセスの中で起こることにも通じることだったりします。

 2022年からはシステム(=チーム)コーチを兼任で行うようになりました。組織と個人に「相互に変化をもたらすオモシロさ」をアイティメディアでも広げたいと考えるようになり、システムコーチのプロフェッショナル資格を取得し、2023年4月から企業内コーチ専任となりました。草の根的にチームコーチングを提供していた活動が本業になった形です。そして同5月から、人事統括部長に就任し、いろいろな取り組みを企画して始動するところです。

――河本さんの現在の肩書でもある「システムコーチ」は、いったいどんなことができる資格なんでしょうか? アイティメディアでシステムコーチとして実現していきたいことも、あわせて教えてください。

河本: システム(=チーム)コーチングは、チームをひとつの生命をもったシステムと見なし、チーム全体に関わっていく手法です。チームのパフォーマンス向上、チームが共有する目標の達成を目標としています。具体的な手法としては、個人やグループでの振り返り、影響力のある内省的な質問に基づく対話などを通じて、メンバーの意識を高め、信頼関係を築き、コミュニケーションを改善します。

 私はアイティメディアを1つの生命体に見立てています。今起こっている外部環境の変化を機会として、この生き物がどんな風に変化し進化していくのか、あらゆる可能性があると思ってワクワクしています。自分もその生命体の一部として、自分たちの中にあるエネルギーを感じ取りながら、エネルギーが最大限に循環できるように、いろいろチャレンジしていきます。

まず人事が変わる

――ありがとうございます! 人事の一員として、河本さんと一緒に変化をもたらしていけることにワクワクしています。河本さんは、人事統括部をどのような組織にしたいと考えておられますか?

河本: 人事統括部も一つのチームであり、生命体です。人事統括部というチームが健全な状態であることと、人事統括部のメンバーひとりひとりが健やかである状態を同時に実現することを探求していくつもりです。組織も個人も健康であるためには、健全な循環が大事だと思うんです。自らと違うものに好奇心を持ち、その要素を必要に応じて統合していくことで、自らを変化させていく視点を持つことが必要だと考えています。

 この世界に存在するものは全て変化し続けています。それが自然の摂理です。この変化を機会として歓迎できる雰囲気を作るために、まずは人事が、目に見えない部分も含めた違いに好奇心を持ち、変化をオモシロがるチームでありたいですね。

――「目に見えない部分も含めた違い」ということですが、目に見えないものを扱うのは簡単ではないと日々感じます……。具体的にどのような方法で、目に見えないものをつかむことができるでしょうか?

河本: 「聴く」スキルが大切だと思っています。「聴く」とは、話し手の感じ方に寄り添い、共感することです。感じることには、正しいとか間違っているとかの判断はありません。氷山のイメージでとらえると、水面から見えている部分が、日々の行動や結果としての数値だとすると、そこには評価判断がついてまわります。一方、目には見えない水面下の部分が、ひとりひとりの思いや組織文化です。これまで、感情はビジネスの世界で扱われてきませんでした。業績を伸ばし、企業として発展するための論理こそ重要であり、感情は不要なものとされています。しかし、感情はエネルギーなので、無視し続けると循環が止まり、存在の内側が淀んでいきます。ポジティブな感情だけでなく、ネガティブな感情も含めて、全ての感情をエネルギーとして大切に扱うことで、新しい何かがそこから生まれてくるのです。

 感情を扱うためには、言葉で表現されない部分を受け手が感じ取る必要があります。「うれしい」「悲しい」といった、わかりやすい感情だけでなく、人や組織の中には表現しづらい感情が入り混じっていたりします。また、感情の奥にある「ザワザワする」「意味は分からないけれど、何か気になる」といった、感情にもならない感覚的なものまで含めて、全てのエネルギーを感じ取るのです。

 こういった感情や感覚をフラットに共有できるように、組織の心理的安全性を高めていくことも、人事統括部として取り組んでいきたいと思います。「こんな論理的でないことを言ったらよくないのではないか」「場を混乱させてしまうのではないか」「おかしい奴と思われたらどうしよう」と不安になるのは、心理的安全性が十分でないからです。心理的安全性が高まって感情を共有できるようになれば、一時的に混乱は生まれるかもしれませんが、その後の変化につながる土壌が豊かになり、可能性が広がります。

オープンな人事

――アイティメディアの心理的安全性を高める取り組みとして、河本さんはどんなことを考えておられますか?

河本: 現状から、もっとオープンな人事になっていきたいですね。アイティメディアでは、2018年に人事制度改革を行っています。その後も、2020年には働く場所の自由度を高める「スマートワーク制度」を導入し、2022年に「スマートワーク+制度」(※1)として発展させるなど、社員の価値発揮を最大限にするべく、制度作りや安定した運用に注力してきました。そして、人事責任者が私に交代したこのタイミングで、人事としてさらに進化すべく、今後はオープンさを高めたいのです。人事と社員の距離を縮めて、社員のみなさんと一緒に心理的安全な風土を作りだしていきたいと思います。
(※1)アイティメディアのリモートワーク制度である「スマートワーク+制度(Long・Short)」の詳細はこちらをご覧ください。

――「オープンにする」とは、具体的にどのような取り組みでしょうか? 河本さんがもっとオープンにすべきだと考えている点があればお聞かせください。

河本: 私は、社内への情報開示を進めていきたいと考えています。人事という立場だからこそ知る様々な情報をフラットに全社員に共有したいです。例えば、スマートワーク+Long制度を利用して地方に移住している人が少しずつ増えています。どんな暮らしをしているのか、どんな工夫をしながら仕事しているのか、などぶっちゃけの実態を共有する。また、スマートワーク+Short制度を利用している人はこんな体験をしててすごく刺激になってるとか。副業をしている人も結構いるんですよね。どんな経験を積んでいるとか聞きたくないですか? 育休を取っているパパ社員も少しずつ増えていますが、リアルな実態はどんな感じなのか、送り出す側のみなさんはどんな風にやりくりしているのかとか。

 マイナス要素のある話題を知って、社員が不安になるという意見もあるかもしれません。しかし、会社が情報をオープンにしているという実感を持てば、社員はかえって安心するのではないでしょうか。もちろん、個人が出したくない情報は伏せておくべきですが、基本的に会社のことを知れば知るほど会社に対しての愛着がわいてきます。

 情報をオープンにすることは、イノベーションを促進することにもつながります。イノベーションの種は、現在の自分の業務や価値観の外側にあります。しかし、疲弊してしまったときは、必要だと思う情報以外をノイズと見なしてしまうものです。目の前の業務に直結しない情報にも触れてみようと思えるよう、心の余白を作れるような取り組みはしたいですね。

 その際、何をもって「オープン」とするか、そのために取り組むべき事柄は何か、人事統括部全体で対話しながら決めていくことを大切にしたいです。まずは人事統括部から、オープンな文化を自分たちで意図的に作り出したいからです。「否定せずに共感して聴く」取り組みを人事統括部メンバーで行い、自分の価値観の外にあるものを受け止める姿勢をメンバーが身に付けられるようにしたいと思います。それにより、個人と組織の相互的なイノベーションの起こし方を人事統括部が体現したい。短期的には非常に小さな変化なので、ある程度時間をかけて、腰を据えて取り組むつもりでいます。

会社の血液

――これまでは、人事制度を設計し、安定して運用することを中心として取り組んできましたが、今後はメンバーひとりひとりの個性や考えがより反映された人事部門になりそうですね! ところで、河本さんにとって会社における人事の役割とは、いったいどのようなものでしょうか?

河本: 会社をひとつの生命体としてとらえるなら、人事は「血液」だと思います。

 社内の各部門は、生命体における臓器や筋肉のように、企業の活動の中でそれぞれの役割を果たしています。人事の役割は、各部門がよりよい形で機能して、アイティメディアという生命体がよりイキイキとした状態で価値を提供していくために、企業全体に情報やエネルギーを循環させることです。

 人事が会社の血液であるとすれば、大切なのは滞りなく全社に行き渡ることです。そのためには、2つの要素が必要だと考えています。ひとつは、身体の隅々の状況、つまり各部門や社員ひとりひとりの状態を把握できていることです。もうひとつは、各部分を、それ自体にとって最適な状態へ回復しながら、全体と調和して機能するように整えることです。表面から見える部分だけでなく、前面に出てきていない部分まで感じ取れる人事でありたいですね。

――人事として、社員ひとりひとりを大切にしたいのは当然ですが、全体に最適化もしなければならず、悩むことがあります……。全体にアプローチしながら、個人を大切にするために、どのようなことができるでしょうか?

河本: ひとりひとりの社員に対しても、その人の全体性を取り戻す視点をもって関わることだと思います。

 社員と接するとき、前面に出ているのは、あくまでその人のひとつの側面です。表現されている意見は真摯に受け止めつつ、表から見えていない部分も尊重して、コミュニケーションを行います。そうすると、その人自身の中で全体性が取り戻され、アイティメディアという生き物の全体性とのつながりが出てきます。もちろん、企業の活動の中では、あくまでも表に出ている部分を評価しなければならないときもあります。それでも、相手の全体性を取り戻す視点を持って関わると、相手と自分、そしてアイティメディアとの関わりが変化するチャンスは必ず訪れます。互いの全体性が交差し、つながる部分を見つけることができるのです。

森でありたい

――スタンスとして、表から見えていない部分も含め、全て受け止める心構えを持つことで、社員や会社、そして自分自身も成長できるような気がします。河本さんご自身が、人事統括部長として目指すありたい姿を教えていただけますか?

河本: 人事統括部長として、そしてひとりの人間として、森のような存在でありたいです。

 森には、健康な樹木もあれば、腐って倒れてしまった樹もあります。しかし、全ての存在が、必要なものとして調和し、森を成り立たせています。私も、個別の物事だけを見て、いい、悪いと判断するのではなく、アイティメディアという全体の一部として、またひとつの全体として存在することで、自分の関わるアイティメディア、さらにその先につながっている社会に影響を与えていきたいです。あらゆる物事は、全体の中の一部であると同時に、それ自体がひとつの全体でもあります。多様な側面を持つ全体としての私が、他の社員とつながることで循環を生み出し、変化をもたらして、アイティメディアというさらに大きな全体を成り立たせているというイメージです。

 そして、自分の中に余白を作っておきたいです。もちろん、業務に手を抜くことはありませんが、あくまでも最善を尽くしたうえで、何かがおのずから形になる余地も残しておきたいと考えています。あらゆる物事はつながっていて、全ては大きな流れの中で起こっています。自分の努力や計算の外側にある、サムシンググレート的な大いなる何かが自分という存在を通して形になり、影響を与えるのです。たとえば、私がこのタイミングで人事統括部長に就任したのも、何か大きな流れの中でのことだと思っています。これから人事メンバーと共にアイティメディアに関わるみなさんひとりひとりに働きかけていくことで、おのずと何かが形になる流れを作っていきたいです。

自分の可能性が社会に影響をもたらす

――いったい何が起きるか、私も楽しみです! 最後に、アイティメディアに入社したいと考えてくださる方に、メッセージをお願いします。

河本: アイティメディアはメディア企業ですから、その社員として仕事をすることで、自分の変化、チームの変化を社会の変化につなげていけるのがオモシロいところだと思っています。アイティメディアの記事は、無料で読むことができます。つまり、構造的に多くの人に届く可能性が高く、その分影響力も大きいということです。アイティメディアではサステナビリティ推進も重視していて、短期の成果とともに中長期視点で社会にどのように影響を与えていくのかという観点での議論も積極的に行っています。

 アイティメディアに入社してくださる皆さんには、自分の中のいろいろな側面を可能性として肯定的に捉え、組織の中にいる多様で多彩な人たちとの関わりを通して、自分の価値観の外にあるものをオモシロがる好奇心を大事にしていただきたいですね。

 アイティメディアの一員として、自分やチームの可能性を拓きながら、社会にいろんな影響を与えていきましょう!

――ありがとうございました!