アイティメディアは、20以上のWebメディアを運営しています。そして、各メディアにはコンテンツを管理する編集長がいます。また、編集長とは別に、記事作成に携わる編集記者や組織、さらには業績を管理職としてマネジメントする編集部長という役職があります。編集部長の多くは、編集記者として経験を積んでいますが、バックグラウンドや、アイティメディア入社前の経歴は様々です。
この記事では、BtoBメディア事業本部 メディア本部 編集局 ST編集統括部 エレクトロニクス編集部長の村尾麻悠子へのインタビューを通して、アイティメディアの管理職の姿をお届けします。村尾は、2011年に中途入社後、2020年から「EE Times Japan」の編集長を務め、2023年からは編集部長としてメンバーのマネジメントにも携わっています。聞き手は、人事統括部 HRリクルート&サポート部の堀です。
エレクトロニクス業界の情報を伝えるプレイングマネージャー
――村尾さんが部長に就任されてから、1年経ちましたね。まずは、現在の業務について教えてください。
村尾: 私は、「EE Times Japan」「EDN Japan」というWebメディアを運営するエレクトロニクス編集部長として、メンバーのマネジメントのかたわら、自身でも記事を作成しています。「EE Times Japan」では、世界のエレクトロニクス技術の最新動向を伝えています。また、「EDN Japan」は、エレクトロニクス技術を活用した設計・開発手法や製品動向を解説する技術情報メディアです。
部長としては、部門の目標達成のため、メンバーの役割分担を考え、ひとりひとりの成長に伴走しています。部のメンバーが、遠方在住であったり、これからキャリアを積んでいく若手だったりするため、外部との調整や寄稿記事の編集といった部分は、今のところ私が担っています。その分、展示会や決算発表会への参加等の取材は、メンバーにお願いしています。
流れに乗ってたどり着いた、編集部長の立場
――プレイングマネージャーとしてご活躍されているんですね! それでは、村尾さんのこれまでのキャリアを教えてください。当社の編集部長の中では、少々珍しいご経歴とのことですが……?
村尾: はい、キャリアのスタート段階でメディア業界を志望しておらず、編集者としてキャリアを積んできたわけでもないので、他の編集部長と比べれば、その点は珍しいと思います。
これまでのキャリアでは、そのタイミングでやりたいことに挑戦してきました。編集記者、そして編集長から編集部長という現在の立場は、流れに乗る中で、その時々の上司にも後押しされ、たどり着いたという感覚があります。
新卒での就活は、大学の専門だった国際協力に携わることを志望していたのですが、うまくいかず……。結局、ソフトウェア企業の総務職として、キャリアをスタートしました。
その後、有機化学分析の会社に転職しました。大学で環境マネジメントを学び、環境計量士という国家資格も持っているので、知識や資格を活かしたかったんです。半導体材料の分析、要点を整理したレポートの作成などは、現在の仕事に活きている経験かもしれません。
次に転職したのが、アイティメディアに譲渡される前の「EDN Japan」編集部です。当初はアシスタントでしたが、人手が足りず、記者会見などに取材に行くようになり、見よう見まねで記事を書いているうちに、記者として仕事をするようになっていました。
――その後、「EDN Japan」の譲渡に伴って、アイティメディアにジョインされたんですね。
村尾: はい。担当メディアが同じなので、自分の業務が大きく変わったわけではないのですが、これもまた転機でした。アイティメディアは、多数のWebメディアを運営している企業ということで、他分野の編集記者や、営業職が多数在籍していて、人と関わる機会が増えました。またオンライン専業なので、社員として、これまでと異なる動き方、考え方を身に付ける必要がありました。
とはいえ、入社前年にアイティメディアが競合の媒体を取得していたため、不安よりは、競合も含めて自分で手がけられる楽しみのほうが強かったです。
――お話をうかがっていると、村尾さんがご自身の気持ちに素直に、かつポジティブに考え行動されていることが伝わってきます。2023年に、編集記者のスペシャリストから、管理職にキャリアチェンジした際は、どうだったんでしょうか……?
村尾: もともと、キャリアチェンジは頭になく、編集記者として働き続けるつもりでした。しかし、スペシャリストコースを選択した編集記者を見ていて、動き方や成果の出し方は、簡単に真似できるものではないと感じてもいました。自分がスペシャリストとしての覚悟を持てるか、ふさわしい成果を出せる能力があるか、悩んでいましたね。
その悩みを上長に相談するうちに、管理職としてのキャリアもあると提示してもらいました。ちょうど、エレクトロニクス編集部が新規に立ち上がるタイミングだったこともあり、管理職に挑戦してみようと踏み切った形です。
アイティメディアの人事制度は、管理職とスペシャリストという2つのルートが、どちらを選んでも常にもうひとつの選択肢として用意されているので、キャリアの転換にもチャレンジしやすいと実感から思います。
部下の味方
――村尾さんのキャリア転換の一歩を、人事制度を通してサポートできたことが分かり、うれしいです! 実際にマネジメントを経験したご感想も教えてください。
村尾: 率直に言って、マネジメントには、聞きしに勝る大変さがありました。プレイヤーは、自身の業績の最大化に集中して取り組めばよいのですが、マネージャーはメンバーの特徴や現状も把握して、チーム業績が最大化できるよう、考えなければなりません。その点で、プレイヤーだったときとは全く違う考え方が必要でした。たとえば、自分でやったほうが早い仕事でも、あえてメンバーに任せる判断が必要になります。
マネージャーとして大切にしているのは、部下の味方であることです。振り返ってみると、私自身が上司や同僚に恵まれて、温かく見守られ、のびのび仕事をさせてもらってきたんですよね。マネージャーになったとき、自分もこれまでの上司と同じような環境を作りたいと思いました。
たとえば、自分もメンバーもリモートワーク中心の働き方なので、顔を合わせなくても安心して働いてもらえるよう、コミュニケーションを工夫しています。分からないことはどんどん相談してほしい、押さえるべきポイント以外はどんどん新しい挑戦をしてほしいというメッセージが伝わるよう、心がけています。ただ、今後は部門出社日を設けたり、若手の取材の同行を増やしたりなど、対面でのコミュニケーションを増やす必要性も感じているところです。
また、現在のメンバーは若手中心なので、ひとりひとりの成長に伴走するメンターの役割も重要だと考えています。プレイヤー、マネージャー、メンターという3つの役割を並行してやり切ることが、今の自分の課題ですね。
エレクトロニクス領域への思い
――ご自身が温かく見守られた経験を活かして、今はメンバーの味方になろうとされている村尾さんの姿勢が、とても素敵です! 編集記者として、また編集部長として、長年携わってきたエレクトロニクス領域に対しての思いは、どのようなものでしょうか?
村尾: エレクトロニクス領域は、ずっと応援してきたスポーツチームのように、自分とは切っても切れない、思い入れのある存在です。私はあくまでも領域のことを外から伝える立場ですが、サポーターのような気持ちで応援しています。
エレクトロニクス領域で扱う半導体のような電子部品は、ユーザーが目にする製品の中に組み込まれている黒子のような存在です。しかし、もし電子部品がなかったら、PCもスマートフォンも動かず、私たちの生活は成り立ちません。エレクトロニクス領域は、見えないところで社会の根幹を支えているんです。
とはいえ、私も最初は親しみを持つどころか、エレクトロニクス領域に馴染みがなく、無我夢中で目の前の記事を仕上げていました。しかし、取材を続けていると、エレクトロニクス領域、ひいては製造業全体が社会を支えていることが理解できて、敬意を持つようになったんです。その後、現場の開発者だけでなく、より上位の役職者や違う立場の取材相手とも話すことで、業界のよいところや課題も見えてきました。こうなると、業界に対する親しみが湧いてきて、面白さを感じるようにもなりました。
最近は、半導体業界が大きな注目を集めていますよね。長年共に成長してきた業界が活性化しているのは、とてもうれしいです。でも一方で、自分だけが知っていた「推し」のいいところが広まったような、ちょっとした寂しさもあります。ただ、半導体業界の人手不足は深刻なので、認知度が高まって関係者が増えることは絶対に必要です。注目されているのはありがたいことだと考えています。
しなやかな組織を育てたい
――「推し」という言葉からも、半導体業界への愛が伝わってきました! 部下や業界への思いもうかがったところで、村尾さんご自身は、今後のキャリアをどのように考えておられますか?
村尾: 編集部長の立場は、自分より若い人に早めに任せたいと考えています。時代に合わせた変化が激しいので、キャッチアップしていけるのは若い人ではないかと思っているためです。
その後は、半導体業界全体に貢献できるような取り組みをしていきたいですね。今は、EE Times Japan編集長、エレクトロニクス編集部長という立場の制約がありますが、肩書が外れたら、取り組みの自由度が上がると思うので、その立場でできることをいろいろ思い描いています。もはや自分と切り離せなくなっている半導体業界の「推し活」というところでしょうか。
そのために、まずはエレクトロニクス編集部を、少数精鋭で機動力の高い組織にしたいです。半導体業界そのものの規模から見て、エレクトロニクス編集部が短期的に大規模な組織になることは、あまり想定していません。その分、業界の激しい変化にひとりひとりが対応できるよう、編集記者としての基礎的な力と、挑戦する姿勢を育てていきたいです。レジリエンスの高い、しなやかな組織を育てたいですね。
挑戦で手にする成長機会
――最後に、この記事を読んでいる社員や、アイティメディアで働きたいと思ってくださっている方に向けて、メッセージをお願いします!
村尾: 社内外を問わず、キャリアを形成中の方に伝えたいのは、「今の考えだけで視野を狭くしないでほしい」ということですね。もし、希望通りのポジションに就けなかったとしても、今のポジションでできる仕事はたくさんあると思います。目の前の仕事に取り組んでいると、その中からやりがいが見つかることがあります。
また、マネージャーのキャリアが視野に入っている方には、「成長の機会になるから、チャンスがあればぜひやってみて」と伝えたいです。マネージャーは責任があって大変そうに見えるかもしれませんが、プレイヤーであったとしても多かれ少なかれ目標を持っており、責任があるのは同じです。
そして私は、マネージャーになって成長したと感じています。視座が上がり、組織の中での自分の立ち位置を、俯瞰的に考えられるようになりました。また、リソースに対してタスクが増えた分、ひとつひとつの仕事を見極めて適切に対応する感覚が研ぎ澄まされたとも思います。特にアイティメディアの場合は、マネージャーからプレイヤーに戻ることもできるよう、人事制度が設計されているので、ためらわずに挑戦してほしいです。