管理職は「チームに必要な役割の1つ」 特別視しない新しい捉え方

 働くうちに向き合う機会が増えるものといえば、キャリアプラン。経験を積み、自分のキャリアをどうしたいか考えるうちに、「管理職」や「スペシャリスト」という選択肢が身近になってきた人もいると思います。

 しかし、実際のところ彼らが何を考え、どんなミッションを持ち、どんな風に仕事をしているのか、知らない人も多いのではないでしょうか。

 そこで採用チームでは、管理職やスペシャリストの実態をお伝えするため、「現在の仕事やミッション」「働き方やワークライフバランス」についてインタビューを実施。初回となる今回は、マネジャー歴約10年、現在はメディアプロダクト部で働く河村泉の話をお届けします。


【メディアプロダクト部マネジャー 河村 泉】
2003年ソフトバンクメディア&マーケティングに新卒入社し、ソフトバンク・ジーディーネットに配属。同社とアットマーク・アイティ(「@IT」の元運営会社)の合併などを経て、アイティメディアの営業へ。ビジネスメディア「誠」(現ITmedia ビジネスオンライン)の営業担当を経て、営業部のマネジャーに就任。その後、ねとらぼ局のマネジャーを経験し、現職。
※所属部署や業務内容はインタビュー当時(2020年11月時点)のものです

――現在、河村さんがどんなお仕事をしているのか教えてください

河村: 今はアドバンスト・メディア事業本部のメディアプロダクト部でマネジャーをしています。メディアプロダクト部は、「ねとらぼ」のタイアップ商品などを売る「セールスチーム」と、ねとらぼとD&S(※)の商品開発・企画進行を行う「プロダクトチーム」に分かれているのですが、その二つをまとめている感じですね。
(※)「ITmedia Mobile」「ITmedia PC USER」「Fav-Log by ITmedia」のことを、社内ではまとめてデバイス&サービス(D&S)と呼んでいます

 もともと、コンシューマー向けメディアである「ねとらぼ」の関連部門は「ねとらぼ局」という形で1つの組織にまとまっていて、私はその中で広告営業から企画進行、タイアップ記事制作までをまとめて担当する「プロモーション部」に所属していました。

 それが、20年10月の組織変更で記事制作の部分をねとらぼ編集部に戻すことになり、企画関係を担当する新しい部門として「メディアプロダクト部」ができたんです。合わせて、D&Sの3媒体を管理する機能も加わりました。

20年10月時点の組織図より抜粋。D&Sの営業はメディアプロダクト部のセールスチームではなく、9月までと同じく営業本部が担当している

育休明けの大抜てき 「いきなり管理職」の戸惑い

――これまでもずっと企画の仕事をしてきたんですか?

河村: いえ、もともとは営業をしていました。私が新卒で入ったソフトバンクメディアマーケティングというソフトバンクのメディア事業をやっている会社で、そこでアイティメディアの前身であるソフトバンク・ジーディーネットに、営業として配属されたんです。

 会社がアットマーク・アイティと合併して「アイティメディア株式会社」になってからもずっと営業をやっていたんですが、20代の終わりに産休に入って、育休明けに「ITmedia ビジネスオンライン」の前身であるビジネスメディア「誠」のメディア営業担当として復帰したんです。今は各事業部に企画部がついていますが、当時は営業本部の中に各メディアの企画担当者がいる形だったんですね。

 そして、コンシューマー向けだった誠をBtoB寄りのITmedia ビジネスオンラインへ刷新するタイミングで営業部に戻されて、営業のマネジャーをすることになりました。そして、2年前に「新しくねとらぼのタイアップを販売するチームを作るぞ!」ということで、今度はそちらでマネジャーをすることになったんです。マネジャー経験はもう7、8年になるんじゃないでしょうか。

――企画から営業のマネジャーへ、急な抜てきだったんですね。

河村: 正直びっくりしました。自分が営業としてずっと成績を残してきてマネジャーになるなら分かりますが、企画として戻って営業を再経験しないままマネジャーをやることになったので、戸惑いはありましたね。

 その反面、うれしかったのも本当です。実績というよりも、期待を込めてマネジャーというポジションを与えられて、次のステップに押し上げてもらったんだと思っています。そこからは、結果を残そうと必死にやってきましたね。

――現在は企画のマネジャーをされていますが、営業のマネジャーの仕事から大きく変わったところはありますか?

河村: 「チームマネジメントをやっていく」という点は共通しているので、営業部での経験は今のチームでも生きていると思います。各メンバーを今後どうしていくか考えたり、全体のタスク管理をしたり、「このメンバーはまだ少しスキルが足りないけれど、この業務を任せればもっと伸びるんじゃないか」とタスクを割り振ったり……といったところでは、過去のマネジメント経験が役に立つことも多いです。

 一方、企画と営業で変わったところもありました。営業は「あるものを売る」のが基本ですが、今の部署では担当するメディアを理解して一から商品を作らなければいけない。私も誠の企画担当の経験はあったものの、当時は「営業として売り上げを立てながら企画を作る」というポジションだったので、ねとらぼの企画とはちょっと立ち位置が違っていたんですよね。

 ねとらぼの企画は「コンテンツのクオリティーを維持しながら売り上げも伸ばす」など、複数の要素を加味して考えていかなければいけません。自分にはその経験がないので、どの方向を向いて、何を目標にして進めばいいか悩んだときもありました。自分の経験不足がメンバーにどう写っているのかも、ずっと不安でしたね。

――そうした不安や悩みをどうやって解消してきたんですか?

河村: そうですね……。私はどちらかというと勢いでこなしてしまうタイプなのですが(笑)。あれこれプレッシャーを感じて悩むより、「周りの力を借りてやっていこう!」という姿勢に切り替えたのが大きいと思います。

 私見ですが、マネジャーというのは役割の1つでしかなく、全ての業務のプロフェッショナルである必要はないと思っているんです。もちろん、自分のアイデアや意見でどんどん引っ張っていくタイプのマネジャーもいるとは思いますが、私には難しかった。そこで、私が足りない分、メンバーの皆さんの力を借りて、チームを1つにする方向に持っていくことにしたんです。

 現場の皆さんには、「皆さんがこの役割の責任者を担ってくれるからこそ、チームが1つになれるし、それが業績への貢献にもつながるんだ」というメッセージを出し続けてきました。専門性を持った現場の方々の力を生かすことで、自分自身の負荷も軽減してきたと思います。

子育てだけが特別じゃない 必要なのは「どんな事情があっても働ける環境」

――実際に管理職を経験してみて、何か気付いたことはありますか?

河村: 「自分で時間管理ができる」のは管理職のメリットの1つだな、と思いました。育休明けはどうしても「子供のお迎えで18時には帰らなきゃ」といったことがありますよね。現場にいた頃は、「自分の仕事は帰ってからやればいいや」と思っていても、やっぱり他の人より早く帰ることに負い目があったんです。

 私が産休育休を取ったのはもう10年近く前ですが、当時は制度ができたばかりで、使っている人はほとんどいない状態。周囲は「しっかり子育てをしてください」と受け入れてくれていたものの、気を遣われているのは分かったし、何より周りと同じように働けないことに対して、自分の感情がついていけないところがありました。思い返すと、当時の自分は今以上に結果を出すことにこだわっていたと思います。

 もともと「仕事をしっかりやりたい」という気持ちが強かったこともあって、当時はワークライフバランスを取ることをあえて拒否していました。バランスが取れていない方が、むしろ頑張っていていいんじゃないか、と。しかも、周りにそれを悟られたくないから、「楽しくやってます」「充実してます」みたいなことを言っていました。今振り返ると「痛いな~!」って思うんですけどね(笑)

 でも、そうしているうちに、今後自分と同じように子供を産んで、仕事も続けて……という人が出てきたときに、同じことをやるのはしんどいだろうな、と思ったんです。

 何とかできないかと考えているうちに管理職になって、現場にいた頃よりも心理的な負担や責任は大きい代わりに、時間は自分で決められるようになりました。新しく何かを始めるのも、自分の裁量で決められる。そうやって周囲に気を遣う必要がなくなったのは、管理職になってよかったポイントの1つですね。

 ただ、私はずっと「子育てだけが特別ではない」と考えているんです。人はそれぞれいろいろな事情を抱えていて、私にはその1つとして子育てがあるけれど、チームの皆さんにも、同じように大切にしたいものや時間があると思うんです。

 だから、メンバーに対しては「さまざまな事情を考慮して働けるようにしたい」というメッセージを発信して、自分もしっかりと休みを取ることで、遠慮なく休みをとってもらえるようにしています。そうやって周囲を巻き込んでいくことで、自分自身のバランスもうまく取れるようになってきました。こうした工夫ができるのは、管理職ならではかもしれませんね。

「ゼネラリストというプロフェッショナル」という選択肢

――では、管理職を続けてきたことで、新たに出てきた悩みや課題はありますか?

河村: 「自分は管理職のままでいいのか」と不安になることはありましたね。管理職になると、もともと積み上げてきたプロとしての側面を残しつつ、チームマネジメントもしなければいけないので、ゼネラリストとしての要素が強くなってくる。スペシャリストほど突き詰めた専門性がないように見えてしまう気がしたし、自分自身がプロフェッショナルとして何かを極めたい気持ちもあったので、「このままでいいのか?」と。

 でも、もう一度「管理職」というものを見つめ直してみて、最近は「ゼネラリストというプロフェッショナル」を突き詰めてもいいかもしれない、と思うようになりました。

 マネジャーの置かれている環境や適正などを考えたときに、会社の中で「チームマネジメント」にしっかりと取り組んでいる人って、実はあまり多くないのかもしれないと思ったんですね。それなら、マネジメントを基礎から落とし込んで、どんな業種のどんな場所にいっても、自分がチームのマネジャーとしてやっていけるだけのスキルを持ったプロフェッショナルなろうかな、と。今後は研修に参加したり、資格を取ったりしてみようと思っています。

 ただ、正直にいうと、「マネジメントのスペシャリスト」を突き詰めるべきかどうか、まだ迷っているところもあります。メディアプロダクト部の人間として「やっぱりもっと営業を突き詰めていく必要があるな」「これからはデジタルマーケティングを学んでいくべきじゃないか」と感じることもあるので、自分自身のキャリアについては、広い視点で考えていきたいですね。

 合わせて、メディアプロダクト部もより良い組織に育てていけたらと考えています。こちらも専門性が足りないという課題があり、今は組織が小さいので勢いでカバーしているところもありますが、今後は高い専門性を持つ人を入れて大きくしていきたいですね。

「私」にとっての“管理職”

――では最後に、河村さんにとって「管理職」とはどんなものですか?

河村: そうですね。管理職というと「大変そう」「難しそう」と思われがちですが、私はあくまで役割の1つでしかないと考えているんです。仕事はそれに関わる人みんなでやるものであって、管理職だから偉いわけじゃないし、「メンバーを管理している人」というのはちょっと違うと思うんですよ。

 じゃあ管理職は何をしているのかというと、何か1つのことをチームで達成するためには、いろいろな要素を組み合わせてまとめていく必要がありますよね。全員が目的に向けて自走していけるならいいんですが、実際には、会社のことを考えてどんどん動いていける人ばかりではない。

 だから、どこかで困っている人を後押ししたり、軌道修正したり、本人の意向と会社のミッションをすり合わせたりしなければいけない。そのお手伝いをする役割が管理職だと思うんです。そう考えると、そもそも「管理職」なんて言葉を使わない方がいいのかもしれません(笑)

 管理職という言葉のイメージに引っ張られるせいか、任された人も目の前の業績や社内のポジションについて考えがちですが、それだけにとらわれるのはもったいない。「マネジャーとしての仕事を全うするぞ!」という気持ちをしっかり持って、メンバーから「管理職って必要だよね」「マネジャーって大事だよね」と思ってもらえるような働きができるようになるといいな、と思います。

 それから、今後の選択肢として管理職を考えている人は、任せてもらえる機会があったら、まずは一度飛び込んでみたらいいじゃないかな。もちろん責任やプレッシャーはありますが、管理職だからこそ、メンバーに足りないところを補ってもらったり、一緒にワークライフバランスを取っていけたりすることもあると思います。

 もちろん、何をもってバランスが取れているとするかはその人次第だし、管理職はあくまで選択肢の1つ。私の場合は、「仕事をしたい」気持ちと大切にしたいプライベートがあって、今は管理職というやり方で折り合いをつけている、という話です。だから無理に管理職になる必要もありませんが、「やってみたいけど不安な人」や「挑戦したいけど悩んでいる人」がいるなら、すごく良い役割ですよ、と背中を押したいですね。