アイティメディアでは、社員の志向や強みを活かしてイキイキ働けるよう、一定の等級からキャリアパスを選択制にしています。具体的には、組織長として組織の業績を最大化する「組織価値コース」と、個人の高い専門性で組織に貢献する「個人価値コース」の2つです。どちらのコースも価値発揮レベルが等しければ、等級や報酬のレンジは同じです。
しかし、「組織価値コース」いわゆる管理職に抵抗がある方は多いのではないでしょうか。特に女性は「ライフイベントを経ても管理職として働けるイメージが持てない」と不安に思う方もいらっしゃるかもしれません。そこで今回は、出産、育児休業を経験し、人事部 採用チームのチーム長として復職をした木幡麻衣のインタビューお届けします。聞き手は、同じく採用チームの堀真由華です。
――まずは、木幡さんの現在の役職である「チーム長」の役割について教えてください。
木幡: チーム長は管理職の一歩手前、“管理職見習い”というイメージですかね。プレイヤーとしてチームの業績やメンバーを牽引するだけではなく、チーム力を向上させる役割も担います。チーム全体のコンディション管理や、メンバー個人のマネジメントを行う責任がありますが、管理職と異なるのは、目標設定や評価の責任はまだ持たないことです。もちろん、適切な目標設定や評価のために管理職である上司に提言することはあります。
――現在は管理職を目指していると思いますが、当初から管理職志望だったんですか?
木幡: いえ、3年ほど前まで「管理職なんてなるだけ損」だと思っていました(笑)。「仕事が増えて残業時間も長くなるし、責任が重くなって精神的にもきつそう。もし子どもが産まれたら到底無理だろう」というのが元々のイメージです。
――かなりネガティブなイメージですね(笑)。何か変わるきっかけがあったのでしょうか?
木幡: はい。きっかけは大きく2つです。
1つめは、上司からの言葉です。先ほどお話した、管理職へのネガティブなイメージを上司へ伝えたところ「逆に管理職だからこそ仕事をコントロールできる」と言われたんです。つまり、業務に優先順位をつけ、優先度の低い業務は廃止することもできますし、メンバーの育成観点で仕事を任せることもできます。管理職になったら全てを担わないといけないという考え方が変わるきっかけになりました。
2つめは、新メンバーの入社です。それまでほぼ1人で採用業務を担っていましたが、採用担当として新メンバーが入社したことで、彼に業務を引き継ぎながら仕事を進める、いわば“疑似チーム長体験”をしました。その中で、上司から言われた「仕事を任せる」というのがどういうことなのかが現実的に理解できたんです。ただ任せて放置ではなく、しっかり見守り伴走する必要はありますが、物理的に時間はできるので、今まで手がまわっていなかった仕事に取り組むことができました。管理職になって数名のメンバーと一緒に同じ目標を共有すれば、もっと大きな課題にも取り組める。それは自分にとって非常にやりがいのあることだと確信しました。
その後、正式にチーム長任用のお話をいただいたので、管理職を目指して組織価値コースに進もうと決心しました。
――実際にチーム長を経験してみていかがでしたか?
木幡: 「仕事が楽しくなった」というのが正直な感想です。挑戦したいと思っても、自分だけではなかなかできなかったことが、メンバーの力を借りて挑戦できるようになりました。以前は依頼された採用案件をまわすことで手一杯でしたが、採用戦略を見直したり、採用広報に取り組んだりできるようになったのは、チームメンバーのおかげです。それに、メンバーから新たな視点や気づきをもらうことも多く、課題解決の選択肢がどんどん広がっている実感があります。
チーム長になって残業時間が増えることもありませんでした。ただ、メンバーからの確認依頼などは頻繁に入ってくるので、それを考慮したスケジュール設定を意識するようになりましたね。自分の業務で逼迫していると、メンバーにも迷惑をかけてしまうので、仕事の取捨選択は常に行っています。
――木幡さんが考える組織価値コースの魅力は何ですか?
木幡: 課題解決の引き出しが増えること、いちプレイヤーとしては到達できない場所に到達できることですかね。もちろん組織を率いる責任は重くなりますが、それ以上に、やりたい仕事に取り組める楽しみが、私の場合は勝っているかもしれません。
――木幡さんはご出産、育児休業を経て復職されましたよね。育休前後で何か変化はありましたか?
木幡: ゼロベースで考えることが多くなりました。アイティメディアに入社して5年間ずっと採用業務を担ってきた中で、考え方が凝り固まっていた部分が少なからずあったと思います。仕事から約1年間離れたことによって「そもそもこの手法である必要はないんじゃないか」と考えるようになりましたね。
また、限られた時間内で成果を最大化したいので「だらだら考える」ことが少なくなったと思います。煮詰まってしまったら誰かに話す。そうやって壁打ちしているうちに打破できることもあるので「あ、いま思考が堂々巡りしているな」と思ったらすぐミーティングを入れるようにしています。
――育児と仕事の両立はどうですか?大変なことはありますか?
木幡: 大変なことだらけです!そもそも育児だけでも非常に大変なので、それを仕事と両立となると楽なわけがないんですよね(笑)。
でも私は仕事復帰してよかったと思っています。もちろん子どもは何よりも大切ですが、保育園に預けて離れてみたことで、子どもとの時間がさらに愛おしく思えるようになりました。それから、私は育児だけだと社会との繋がりを感じにくかったので、働くことで、自分の仕事が会社、ひいては社会に何らかの影響を及ぼせているかもしれないと思えるようになりました。
「両立」といってしまうとどちらも完璧にこなしているイメージがありますが、どちらも「ほどほどに」の精神が、仕事をしながら子育てするポイントなんじゃないかと思います。私はどうしても「出来なかったこと」に注目して落ち込んでしまう性格なのですが、小さくても「出来たこと」に注目して、最低限こなせていれば合格と考える練習をしています。先輩ママパパから育児で手を抜くコツも教えてもらっていますよ(笑)。
――「育児をしながらキャリアップは難しい」と考える方もいるかもしれません。木幡さんはキャリア形成をどう考えていますか?
木幡: 出産・育児でキャリアを諦めることは全くないと思いますよ!そもそも育児は女性だけがするものではありませんから。家族や社会の協力を得れば、十分にキャリアアップしていけると思います。
一方で、特に子どもが小さいうちは、仕事よりも子どもとの時間を大切にしたい方もいらっしゃると思います。そういった時期は仕事をセーブしてもいいんじゃないでしょうか。またバリバリ仕事をしてみたくなったら、そのときはそうすればいいですし。アイティメディアの場合、バリバリ仕事をする人も、ライフイベントで仕事をセーブする人もいます。社員の意思を尊重した制度が整っているので、長期的にキャリアを描くことができるんです。
大切なことは、ライフイベントに応じて自身の望む働き方を選択できるように、若いうちから価値あるキャリアを積んでおくことだと思います。自分に対する「信頼貯金」が貯まっていれば、仮に時間や場所の制約が発生しても、会社や組織が成果を期待してポジションを与えてくれるんじゃないかと思います。
――最後に、木幡さん個人の今後のキャリアプランを教えてください。
木幡: 「育児をしながらでも十分に管理職を担えるんだ」と周囲から思ってもらえるような管理職になりたいですね。メンバーには心理的安全性を感じてもらいながら、一方でワクワクもできる仕事環境を提供するのが、私の理想の管理職像です。管理職見習いとしてまだ課題はたくさんありますから、ひとつひとつ着実にクリアしていきたいですね。