アイティメディアの人事の仕組み ―第2回:「人材育成」の仕組み―

 就職・転職活動をするとなると、志望先企業の人事制度が気になる方も多いのではないでしょうか。そこで、人事部長・三小田に採用チーム長・木幡がインタビュー。全3回に分けて、アイティメディアの人事制度を詳しくご紹介します。第2回となる今回は、人材育成についてです。

【管理本部 人事部長 三小田 実】
 ベンチャー3社で事業立ち上げを行い、リクルートホールディングスの事業企画マネジャーなどを経験。2015年、リクルートマーケティングパートナーズからアイティメディアへの「キーマンズネット」の事業譲渡に伴い当社へ転籍。2017年に人事部長に就任。人事制度刷新などを通じ、社員がイキイキ働ける環境作りを推進している

 

3つの機会で成長を促す「人材育成」

――(聞き手、木幡)アイティメディアの人事制度は、「Value First(価値にとことん、こだわり抜く)」をポリシーにしていますが、社員がより価値創出をするために、どのような人材育成を行っていますか?

三小田: 当社の人材育成で特徴的なのは、「育成プラン」と「成長機会」の2つです。

 まず育成プランについて。当社は人材開発のため半期に一度、本部ごとに管理職が集まって協議を行っています。そこでメンバー一人一人の中長期的な育成方針について議論し、志向や適性を鑑みて、必要な経験や育成方針を検討します。

 その結果を、今度は社長・本部長・人事部が議論します。メンバーの成長に必要なポストや異動時期について全社横断で考えることで、社内で最適な育成ローテーションを実現しています。

 次に「成長機会」についてです。米国のリーダーシップ研究の調査機関であるロミンガー社の調査によると、社員の成長に役立つ出来事は、経験が70%、薫陶が20%、研修が10%だったそうです。これを参考に、当社では「挑戦機会」「対話機会」「研修機会」の3つを提供することにしました。

――メンバー一人一人の育成プランを全社横断でかなえてくれるのはありがたいですね。

事前期待で成長を促す「挑戦機会」

――まず「挑戦機会」から具体的に教えてください。

三小田: 新しい業務に積極的に挑戦させ、能力を伸ばすための取り組みが2つあります。

事前期待で柔軟に昇降格

三小田: 1つ目は「事前期待による昇格」です。前回の記事でもご紹介したように、当社の昇格要件には独自指標である「3I(価値発揮能力)」が関わっています。

 3Iは課題解決に向けた行動力を、見立て(Insight)、巻き込み(Integration)、仕立て(Innovation)の3つに分けて定性的に評価するもので、等級ごとに5段階で評価を行います。

 評価は前後の等級と一部またがっていて、A等級の5(最大評価)は上位等級であるB等級の3(中央評価)に相当します。事後評価の会社では「3I全てが評価5になったら昇格」というやり方になるかもしれませんが、当社は事前期待で評価する方針のため、一部の評価が4であっても、期待に応える見込みがあれば昇格させています。

3I評価構造

 
 一方、昇格後に期待役割を果たせなかった場合は降格することもあります。ただし、降格しても降格時の課題点を克服できれば再度昇格することができます。このような柔軟性があるからこそ、リスクを恐れず挑戦することができます。

MBOで挑戦目標を設定

三小田: 2つ目は「MBOの挑戦目標」ついてです。MBOは業績目標に対する成果を定量評価するために半期ごとに設定しているのですが、目標の7〜8割を等級相当のKPIを設定した「基本目標」、残りを成長や昇格に向けて背伸びをした「挑戦目標」としています。

 社員に常に背伸びをした業務を担ってもらうことで、さまざまな経験を通じて成長を加速させています。

――事前期待による昇格も、MBOの挑戦目標も、社員にとって難易度の高い業務だと思います。任せられることに不安を感じる人もいませんか?

三小田: 上司には、難易度の高い業務を任せるだけでなく、メンバーの成長や成果に伴走することも求めているので安心してください。新たな職責・役割・業務を任せることで、社員の経験値や課題解決力が高まり、成長を実感してもらえると思います。

成長を支援する「対話機会」

――上司がメンバーに伴走するとのことでしたが、具体的にどんなことをしているんですか?

三小田: 上司とメンバーの1対1での対話を通じて社員の力を引き出し、組織の目的を果たすことをマネジメントの核とした上で、半期ごとの「目標設定面談」や、定期的にメンバーとコミュニケーションを取る「1on1」を行っています。

Will Can Mustで目標設定面談

三小田: 目標設定面談は、メンバーのありたい姿と今期担ってもらう業務を両立できるようにし、メンバーに主体的に働いてもらうためのもので、半期の初めに行います。

 面談前に記入してもらう目標設定シートには、(1)2〜3年後にどうありたいかを考え、現部署で今期挑戦したいことを記載する「Will」、(2)ありたい姿の実現に向けて開発すべき能力や研修の受講計画を記載する「Can」、(3)業績目標の達成や価値発揮能力の向上に向けて意識することを記載する「Must」の3項目を設けています。

 Will×Can×Mustの3つの輪が重なる面積が大きくなることが、社員が自律的に働き、成果を出すことにつながると考えているからです。面談ではシートをもとに上司とメンバーが話し合い、メンバーに主体的に働いてもらえるよう動機付けをします。

 そして半期が終了したら、設定した目標に対して「振り返り面談」と「評価フィードバック面談」を行います。上司は評価会議(第1回参照)で決定した評価を直接メンバーに伝えます。この際、評点だけでなく、期初設定した目標シートに沿って評価に至った背景も説明します。

――半期の自分の業績や行動がどう評価されたか、具体的に教えてもらえるんですね。

1on1ミーティングで期中伴走

――定期的に行う「1on1」ではどんなことをするのでしょうか?

三小田: 1on1は期中に定期実施する上司とメンバーの1対1の面談です。メンバーが主役となって、主に「信頼関係作り」「成長支援」「成果創出支援」の3つについて話してもらっています。

 信頼関係作りは、メンバーの心身の状態を確認し、業務を調整したり不安を取り除いたりして「関係の質」を高めるためのもの。雑談を通じて自己開示を行い、お互いの価値観を理解しあったり、メンバーの悩みや不安をヒアリングしたり、長所をほめたりすることで、メンバーのモチベーションを高めていきます。

 一方成長支援は、担当役割や組織の決定などをしっかりとメンバーに伝えることで、「思考の質」を高めるためのものです。決定事項の背景やそれがメンバーにどう影響するかを説明したり、仕事の振り返りを通じて期待役割とのギャップを埋めてもらったりすることで、それぞれの役割や仕事に意義を感じてもらう狙いがあります。

 そして成果創出支援は、メンバーが抱えている課題をサポートし「行動の質」を高めてもらうためのものです。困り事の相談に乗ったり、障害を取り除いたりすることで、メンバーが成果を出しやすくするのも上司の役目。ポイントは、上司が上から業務進捗を確認するのではなく、メンバーが相談したいことに耳を傾け、サポートすることです。

 どうしてこの3つについて話してもらうかというと、成功循環モデル(※1)で提唱されているように、組織成果を上げるためには、関係の質→思考の質→行動の質→成果の質を順番に高めていく必要があるからです。
(※1)マサチューセッツ工科大学(MIT)の元教授であるダニエル・キム氏が提唱している「組織の成功循環モデル」のこと。組織の結果を高めるのには、関係の質を高める必要があるとして、好循環と悪循環のサイクルなどについて説明している

 1on1を実施する企業の中にはメンバーとの関係作りに重きを置いているところもありますが、アイティメディアでは信頼関係を作るだけでなく、成長支援や成果創出支援まで行って初めて1on1をする意味があると考えています。なぜなら、これらの支援なくして上司はメンバーに信頼されないからです。

――そこまで丁寧に伴走してくれたらメンバーも安心ですね。

体系的に学ぶ「研修機会」

―― これまで説明してもらった「挑戦機会」と「対話機会」はOJT(On the Job Training)になりますが、Off-JT(※2)はしていますか?
(※2)Off The Job Trainingの略。職場で行う日常業務の中で教育をするOJTに対し、職場や通常業務とは離れて行うセミナーや研修のことを指す

三小田: はい。研修制度としては社内で実施しているの「コア研修」、社外の研修サービスを活用した「ビジネスOS研修」、SBG(ソフトバンクグループ)の研修の3つを利用できる他、資格取得などの勉強をサポートする自己啓発支援制度もあります。

重要テーマを学ぶ「コア研修」

三小田: コア研修は大きく分けて4つあります。入社時に事業や職務、人事制度など当社の基礎知識を学ぶ「入社研修」、編集・営業・商品企画など職種ごとの職務知識を学ぶ「職種別研修」、管理職やスペシャリストになったときに必要なトランジションを学ぶ「階層別研修」、そしてキャリア形成の考え方を学ぶ「キャリア研修」です。

3Iを高める「ビジネスOS研修」

三小田: ビジネスOS研修では、3Iに則した約300講座を自由に受講できます。「見立て」を養うためには論理的思考力やクリティカルシンキング、「巻き込み」の力を付けるなら傾聴・質問力やプレゼンテーション、「仕立て」を磨くならプロジェクトマネジメントなど、自分に必要な講座を選べます。

グループ会社の「SBG研修」

三小田: SBC研修は、ソフトバンクグループの社員が利用できる研修制度です。同グループの代表である孫正義氏の後継者育成研修「ソフトバンクアカデミア」や、ビジネススキルを学べる「ソフトバンクユニバーシティ」のプログラムに参加できます。

自己啓発支援制度

三小田: そして自己啓発支援制度は、これまで紹介した3つの研修で取り扱わないような、専門性の高い研修の受講や書籍購入、資格取得などにかかる費用などを会社が負担する制度です。上限は社員1人につき半期5万円(通期10万円)で、マーケティングやIT技術の学習に利用する社員が多いです。

――上司がきちんと伴走し、研修も充実しているから、メンバーに背伸びした目標を与えられるというわけですね。

人材育成まとめ

 アイティメディアは、「挑戦機会」「対話機会」「研修機会」によって社員一人一人の成長を支援しています。次回は、当社の仕事環境や働き方についてお伝えします!

>>アイティメディアの人事の仕組み-第3回:「働き方」の仕組み-