エレクトロニクスエンジニアを取り巻く環境、日本人の満足度は最低、米国人とインド人は高い満足度
~EE Times 世界5地域比較調査から~
アイティメディア株式会社
アイティメディア株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:大槻利樹)はこのたび、日本と米国、欧州、中国、インドの5地域の比較を含む「エレクトロニクスエンジニア給与/意識調査」の結果をまとめました。これはアイティメディアが運営する「EE Times Japan( http://eetimes.jp/ )」が、各地域の「EE Times」と共同実施した調査の結果をもとにしたものです。エレクトロニクスエンジニアの給与をはじめ、待遇や仕事に対する満足度・意識の把握を目的として、EE Times Japanが世界各地域のEE Timesと毎年共同で実施しています。
今回の発表内容は、EE Times Japanでも記事として掲載しています。
- 日本のエンジニア平均年収は700万円、前年比1.5%の微減で下落傾向に歯止め
- エレクトロニクスエンジニアの平均年収――欧州、中国、インドで上昇、日本と米国は減少
- 日本人エンジニアの満足度は最低、米国人とインド人は高い満足度示す
調査結果の主なポイントは以下の4つです。
- 自分のキャリアや技術の先進性などに対する満足度:他地域と比べて日本は低い結果に
- エンジニアという職種や会社に対する満足度:米国とインドでは全体的に高く、中国では低い結果に
- 各地域の平均年収:昨年に続き米国がトップ
- 各地域の平均年収の伸び:インドが14.2%で最高を記録、日米は減少
各ポイントの詳細は以下の通りです。
1.自分のキャリアや技術の先進性などに対する満足度:他地域と比べて日本は低い結果に
仕事や会社に対する満足度について、日本で評価の低さが顕著な項目は「自分のキャリアに対する満足度」で、満足していると回答したエンジニアの比率は59%でした。他の地域は米国が85%、インドが84%、欧州が80%、中国が70%と続き、日本とは10ポイント以上の差がつきました。同様に日本と他の4地域を比較して10ポイント以上の差がついた項目には、「会社はエンジニアを尊重している」(50%)、「会社の技術は最先端」(37%)、「仕事で使っている機器は最新」(35%)、「会社は革新性や創造性に力を入れている」(40%)、「会社はエンジニアの革新的な成果に報いている」(28%)などがあり、技術の先進性やそれに対する会社の姿勢への不満が明確に表れています。
【図1】自分のキャリアや技術の先進性などに対する満足度
2.エンジニアという職種や会社に対する満足度:米国とインドでは全体的に高く、中国では低い結果に
「エンジニアという職業に満足」という項目では、他地域に比べて中国のエンジニアの評価が極端に低く、62%しか職業に満足していない結果となっています。中国では「自分の置かれている状況は他の職種と比べて同等以上」(38%)、「私の会社はよい職場」(46%)、「同じ会社に長く勤めたい」(44%)といった項目も5地域の中で最低を記録しており、そのため「自分の子供もエンジニアになってもらいたい」が37%と、他の4地域よりも10ポイント以上低い結果につながっているようです。
【図2】エンジニアという職種や会社に対する満足度
これに対して米国とインドのエンジニアは多くの項目で高い評価を示しており、米国ではキャリアに対する満足度が85%と5地域の中で最高だったほか、「会社はエンジニアを尊重している」(79%)、「会社は革新性や創造性に力を入れている」(73%)、「会社はエンジニアの革新的な成果に報いている」(61%)なども最高の評価になっており、仕事の環境に対する満足度が高くなっています。
インドでは職業に対する満足度が91%と最高で、「自分の子供もエンジニアになってもらいたい」が73%にのぼり、中国のほぼ2倍の比率になっています。その背景として、「会社は以前よりもエンジニアを尊重している」(55%)、「現在の社会は以前よりもエンジニアを尊重している」(59%)の2項目が5地域で最高を示しており、国内におけるエンジニアの地位向上が満足度を引き上げている状況がうかがえます。
【表1】世界のエレクトロニクスエンジニアの仕事や会社に対する満足度などの回答結果一覧
各項目に対して4段階(非常にそう思う、ある程度そう思う、あまりそう思わない、まったくそう思わない)で評価してもらい、そのうち上位2段階(非常にそう思う、ある程度そう思う)を合計した比率を示した。
青字:5つの地域のうち最高、赤字:5つの地域のうち最低。
3.各地域の平均年収:昨年に続き米国がトップ
各地域の平均年収は、円高ドル安の影響があったものの、昨年に続き米国がもっとも高く904万円(前年比166万円減)でした。2位は日本の700万円(同11万円減)、3位は欧州の618万円(同55万円減)となっています(*1)。先進3地域と比較するとインドと中国の水準は低く、インドは225万円(同31万円増)、中国は円に対する人民元の低下もあり141万円(同1万円減)という結果でした。日本の製造業の海外シフト、特に中国への設計・製造業務の移行に拍車がかかる大きな要因になっているようです。
【図3】各地域の平均年収
4.各地域の平均年収の伸び:インドが14.2%で最高を記録、日米は減少
各地域の平均年収は、欧州、中国、インドでは前年調査から上昇する一方で、日本と米国は減少しました。伸び率はインドが14.2%で5地域中の最高を記録し、次いで欧州の9.3%、中国の6.6%の順で増加しています。日本は1.5%の減少、米国は8.5%の大幅減でした(*2)。
【図4】各地域の平均年収の伸び率(前年比)
調査概要
調査件名 | エレクトロニクスエンジニア給与/意識調査 |
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調査方法 | Webサイト |
調査対象 | EE Timesの読者 |
調査期間 | 2010年9月2日~9月15日(日本)、2010年8月31日~9月29日(ほか4地域) |
有効回答数 | 合計5,093件(日本:1,262件、米国:1,501件、欧州:477件、中国:1,136件、インド:717件) |
*1 為替レートは調査を実施した今年9月の平均値で円に換算した結果(1米ドル=84.5円、1ユーロ=110円、1中国元=12.5円、1インドルピー=1.86円で換算)
*2 現地通貨の金額で計算
以上
EE Timesについて
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